坂折棚田とあまべ山荘

「森を考える会」あまべ山荘
瑞浪釜戸 2007.6.30


山荘地内に咲くバイカツツジ・コバギボウシ・ガクアジサイ



ササユリ・ヤマアジサイ属・トリアシショウマ

ママコナ・ムラサキツユクサ・ギボウシ属・?


2007年6月30~7月1日
恵那武並・瑞浪釜戸にて

参加者/東山・小野木・丸山隆・丸山博・石原・崎山・丹羽・長山(8名)

6月30日
10:00 釜戸集合
10:10 あまべ山荘
11:00 坂折棚田見学
12:00 中部大恵那キャンパス
13:00 夕立山・東濃牧場
14:10 あまべ山荘・森林教室
17:00 夕食準備・鍋パーティ
20:30 野天風呂
21:00 二次会

7月1日
06:00 野天風呂・散策
07:00 朝食・ホウバ寿司
08:00 茶会
08:30 森を考える
10:30 解散
目標は森林再生。目的はCO2削減による温暖化防止」

偉そうな、と言われそうなテーマであるが、現在の日本はすべての国民が理解しなければならない「命の問題」である。自分の時代はよくても、子々孫々の時代に希望が持てないような国土、地球であってはならない。一昨年から二回続けて「庄内川土岐川源流・森の健康診断」に市民ボランティアとして参加した。そこで見たものは、放置して荒れ果てた人工林。間伐・除伐・枝打ちされない人工林は林業の衰退を物語っている。安価な外材の雪崩的な輸入で国内林業が立ち行かなくなって久しい。森の健康診断は、市民ボランティアの力を借りて人工林の健康度を調査する。市民、山主、林業関係者が一堂に集う。人工林の現状を理解し、間伐の必要性と森の再生が急務であることを認識させる狙いがある。僕が参加するきっかけになった丹羽さんは、矢森協、伊勢三河湾流域ネットワーク、夕立山森林塾などを通じ、森の健康診断ときこり塾で着実に「森と親しむ市民ボランティア」を育てている。この多忙な人物を招待して、わが仲間に森林スキルをつけさせ、これから何をなすべきかを問う時を、あまべ山荘に設けた。

恵那の自然と森を、実際に目で見てもらうことが大切なため、半日をドライブと散策で触れてもらうことにした。まずは恵那西部の坂折川に沿って作られた棚田を見学。昨年の森の健康診断でお世話になった地元の鈴村さんにバッタリ。棚田オーナー制度の草取り日とのことで、世話をしているとのこと。→坂折棚田詳細

一旦、恵那市街に出て夕食材料を調達し、中部大学恵那キャンパスを訪ねた。記帳していたら応用生物学部の南助教授が学生と来ているとのこと。食堂を覗いて挨拶だけ交わし、待たせていた仲間をトリムコースに案内した。トキソウは時期を逸したかと思っていたら、湿原奥の隠れた湿地に5輪を認めた。付近にはモウセンゴケも小さな白花を咲かせハッチョウトンボが止まっていた。ここには東海要素の湿地が点在している。日当たりの痩せた酸性土壌に湧き水があり、東海要素固有のトウカイコモウセンゴケ、ミカワバイケイソウ、ミミカキグサ、シラタマホシクサなど貴重な野草が季節を彩る。

ここから庄内川・土岐川の源流域林道を走る。地元では野井川と呼ばれている。二次林と人工林が混在した一帯は人の手が入っておらず、混み過ぎた森は成長もままならない。混み過ぎた森の木々は根が発達しないため風雨に弱く、豪雨による土砂崩れなど災害原因になっている。人工林は一瞥しただけで分かるほど荒れている。中には40年生の幹の太さも認められるが、未熟な痩せた木が多く、除伐も間伐もされていない。夕立山森林塾の間伐区域を見ながら東濃牧場展望台についた。後発の丹羽さんから電話が入る。JR釜戸駅で待ち合わせることにして、遅い昼食タイムとした。

第1部・森林教室の始まり
丹羽さんを乗せてあまべ山荘に戻ったら、後発隊のもう一人がすでに愛用のトライアンフで到着していた。全8名が揃い、夕方までの森林教室の始まりである。先生役の丹羽さんの話を理解してから、我々中小企業経営者で何ができるかを問うことになる。人工林の悲惨な現状と、森の健康診断、夕立山森林塾の位置づけ、市民ボランティアは「愉しくて少しためになる」参加意識の広がりで持続させることなど熱弁を披露。民間企業経営者として、東山、小野木の質問やボーイスカウト関係の丸山博、崎山の若手経営者からの質問もあり、参加者の森林問題意識の深まりを感じることができた。永年苦労してきた丹羽さんの言葉には重みがある。しかし、消化不良の箇所も随所にある。歩んできた道が異なるから仕方ないし、我々はまだスタート地点に立ったばかりだ。市民活動は主義主張の異なりからあっけなく細胞分裂することが多い。一年半のエキスポ市民支援活動で実感。その多くは「目標」の違いだけでカンタンに袂を別つ。「目的」が一緒であれば、最終ベクトルだけを合わせ、経過点である「目標」はそれぞれの主張どおりに実行して横並びに連携させ、協力しながら「目的」に近づける。部門制民間企業の経営戦略である。そもそも企業とは「永続発展させることによって社会貢献」する理念(企業価値と使命)を目的に意識の統一を図り、可視可能な中期ビジョンに具体的目標を設定して行動しなければ、船頭多くして船山に登る結果に終わる。丹羽さんのお話は「目標」ではあるが「目的」には触れていない。質問に対しても、そこを濁した裏には、彼の立場が邪魔しているようだ。それを考えるのはあなた達だと第2部の宿題を与えているようにも思えた。

第1部は予定の17時で打ち切り、夕食準備に入る。時間のない丹羽さんの相手役は、先輩経営者の東山、丸山隆両氏に任せ、ありあわせの酒肴を出して、僕は水餃子の仕込みに掛かる。小麦粉を練って皮づくりの準備。具の白菜、ニラ、シイタケをみじん切りして水分を絞り切ってから豚肉ミンチと混ぜ合わせる。味塩、コショウ、ごま油、ショウガであっさり風味を皮の中に閉じ込める。スープは濃い目のしょう油、酢、ごま油、お酒を主体にニンニクとラー油で締める。麺棒作業で疲れたころに、鍋料理担当が手伝いに入ってくれた。やれやれ。準備作業中に飲んだ冷酒二本が利いて来た。晩餐は華やかな飲みっぷりで瞬く間に過ぎていった。水餃子の評判も良かった。ひと安心。

野天風呂で酔い覚まし。とは言ってもカンタンに抜けるものでもない。第2部が危ぶまれる。真っ先に睡魔でダウンしたのは僕だった。早朝からの水餃子道具と材料のチェック。普段はやらない皮づくり作業で疲労困憊の体。致し方ないか・・・。
翌朝は少々二日酔いの重い頭を独り野天風呂で癒し、二次林の手入れされた森を散策しながら野草を求めて写真を撮った。ここは標高400メートル。ササユリがポツリ、ポツリ、静かに佇んでいる。ガクアジサイやヤマアジサイが時期の白花を派手に咲かせている。

先日ランチェスター勉強会で戦略と戦術の違いを話し合った。第二次大戦のドイツ将軍の言葉が紹介された。「目標はフランス軍。目的はパリ」。まずはフランス軍を倒さなければパリは占領できない。戦略とはベクトル、方向を定めるものであり、戦術とはそれに向けた手段である。目的が戦略であり、目標を戦術と定義する場合もある。SWOT分析で将来的な外部環境を分析すれば、環境先進国EUの動きは見逃せない。ドイツ・ハイリゲンダムのG8サミットで採択された「地球環境を害する温暖化ガスを2050年に少なくとも半減する」目標は重い。仲間と森をテーマに語るために、ひとつの戦略論を定義してみた。

目標は「森林再生」
目的は「CO2削減による温暖化防止」

森林再生とは、丹羽イズムの「森は宝」にするための健康な森林を甦らせることである。彼は「森の健康診断」と「きこり塾」を通じて市民ボランティア活動を活発にし、マスコミを通じて国民への浸透を図っている。「民」からの攻めの手法で「官」「学」「産」の目覚めに期待している。「個」の力には限界があるが「継続は金」を信じて理解者を増やしている。
「産」である我々民間企業の手法は逆に身内の「産」から入るべきだ。僕を始め参加者の四人が所属する中小企業家同友会は愛知だけでも2,500経営者が真剣にミッション経営を学んでいる。東山先輩が所属するロータリークラブはワンランク上で地域ボランティアに協力している。法人会や各種団体で活躍している丸山隆先輩も心強い。ボーイスカウト活動に熱心な丸山博、崎山両君は、子供を架け橋として家庭に呼びかけることもできる。
目標とは期限や数量を具体化しなければ実現しない。横の組織を広げて理解者を増やし、何をすべきか実施項目を明確にして実行に移す戦術レベルの具体策である。

目的は戦略レベルであり、企業戦略とは根幹に社会貢献姿勢が存在し、誠実な活動を伴わなければならない。これを忘れて破綻する大企業が後を絶たない。残念なことではあるが「誠実」を忘れた経営は、いつかは破綻する。誠実な活動で経営資源を高め、永続的に成長発展する姿を描く。これが企業戦略である。
目的は「CO2削減による温暖化防止」。ターゲットは全世界だが、愛知というミクロな環境を起爆剤として各地に飛び火させ、誘発連鎖させてマクロを俯瞰する。

CO2削減に向けて新たな法規制が敷かれる。CSRが問われるのも時間の問題であり、一般民間企業としてはSWOTのThreat(脅威)に当たる。しかし、これをOpportunity(機会)に変える知恵が戦略である。10人中9人がノーと首を振るハイリスクな市場を開拓する喜びを楽しもう。失敗は許されないので智将仲間を増やしてリスクの分散を図り、難解な荒廃した森林に再生改革の橋頭堡を築き上げる。

とりあえずの発表会

召集した僕(エコビジネスの可能性)と丹羽先生(市民ボランティアとの協業)のベクトルのズレが参加者を惑わせたことに反省。ただしボランティアでは明確な目的が見えないことも事実。社会貢献できる優秀なエコビジネスの創出には血と汗を伴うが、民間企業の使命としてメスを入れる聖域であり、誰かがやらない限り飛躍的な進展はあり得ないものと思う。パンドラの箱を開ける勇気が欲しい。大それた望みとはかけ離れた結果だが、第一回にしてはそれなりの結論は出た。

ワークショップA(ボーイスカウトグループ)三カ年計画
名称  森の暮らしに楽しさを見つけ、子供を森のファンにする
活動  子供の森の健康診断参加と、森の暮らしキャンプ場づくり
責任者 丸山博。サポート崎山・石原。事務局長山
初年度 9月にボーイスカウト地区キャンプ開催
    東濃牧場近辺。
2年度 子供の森の健康診断に参加。ボーイスカウト中学生対象
    間伐リーダー養成
3年度 ボーイスカウト専用キャンプ場の完成
    ドームテント10張り規模
※子供から親、家庭に「森のファン倶楽部」を広げて行く。
※事務局としてはイメージキャラクターを募集したい。地元との交流を深めるイベントを交互に開催したい。

ワークショップB(エコビジネスグループ)三カ年計画
名称  森林オーナーズ制度確立への足固め。対象は民間企業
活動  ウェブ呼び掛け。民間企業への人脈働き掛け。月例会合
責任者 小野木。サポート東山・丸山隆。事務局長山
初年度 森林オーナーズ制度企画立案月例審議
    ウェブサイトマーケティングの実施
    エコビジネスネットワーク同志経営者募集。目標30社
    恵那森林イベントへの参加による現状把握・情報分析
    会の名称決定。夕立山森林塾との位置づけ
2年度 森林オーナーズ制度企画承認と事業計画の作成
    エコビジネスネットワーク経営者会員目標50社
    自発優先活動役員15名確定で発足行動
    恵那にて正式設立総会開催
    市民ボランティアへの支援予算化
3年度 ロングテールなロハス商品の開発とウェブサイト展開。
    バイオマス技術集約型複合活性化ビジネスモデル創出。
エコビジネスネットワーク企業とは間伐材を有効活用できる企業であるか又はそれをサポートできるノウハウを持つ企業とする。
※多くの部分で長山私案が加筆されています。とりあえずは未承認案として、次回会合への継続審議事項とします。ご了承下さい。

次回はSWOT分析を実施します。外部環境の変化が著しく、新鮮で詳細なデータを収集し、PESTのフレームワークからOTを抽出します。
PEST Politics(政治・法律), Economic(経済), Social(社会・文化), Technology(技術革新)のフレームワークで外部環境の機会と脅威を分析します。
ボトルネックになっている山主と信頼はEに属し、脅威問題解決に当たります。もうひとつのボトルネック、森林事業のコスト問題はPとEとTに属し、将来的な優遇税制、外材の高騰、石油製品の高騰、トヨタ式多能工合理化などを考慮して判断します。

●中小企業の経済環境
先月木曽福島で、危険物取り扱い業者団体総会で講演しました。ガソリンスタンド業者が半分以上。逆風下にさらされている業界であり、下請け体質が定着している。「油以外に売るものはないですか?」の疑問を投げかけました。常識を打破しない限り、泥沼から抜け出せない業界もある。油の枠を超えた燃料とは。下請け体質からの脱却とは。考えるて悩んで変えなければ淘汰される弱小企業。CO2の排出源を売る肩身の狭い業界の未来は変化対応策以外に見当たらない。

●見えにくい建材の将来に期待するもの
エンドユーザーは集成材よりムク材のほうが高いと思う人が多い。その価値観で計算している。ところが最近の高騰で1立方メートル当たり集成材7万円に比してムク材は5.8万円である。品確法の制定以来、ムク材のゆがみによるリスクを嫌った住宅メーカーの需要増も原因の一つだが、中東の需要による欧州材の値上げが牽引している。材木の乾燥技術が進めば、ムク材の復権もありうるし、未成熟な間伐材の集成材化にも道はあるようだ。

●志を共にするビジネスパートナーへの呼びかけ。
所詮中小企業は弱者である。戦略会議でもテーマにしたが、過半数は赤字経営に苦しみ、残りのほとんども何とか損益分岐線上を浮き沈みしている。この状態では経営資源の向上は望めず将来的には衰退し消え去る運命にある。日本の中小企業は高齢化が進み、経営者平均年齢は58.3才で、近隣諸国の若いエネルギッシュな経営者に歯が立たなくなる。充足感と人口減少は確実に需給バランスを崩し市場を縮小させている。コトラーの戦略ポジションからすれば、トップリーダーは一社だけである。チャレンジャーといえる企業も10%以上のシェアで仲間入りできるわけだから数社だけになる。トップリーダーとチャレンジャーの経営資源は、ランチェスターのサンイチの法則から三倍または√3倍となり、縮小経済下では格差が更に広がる。中小企業のほとんどはフォロアーであり、下請け体質同様、値下げ圧力下であえがなければならない。フォロアー脱却の策はニッチャーへの挑戦。新たな市場を創出する努力である。環境先進国ニッポンは中小企業で育てる。中小企業の少ない経営資源のいいとこ取り、得意技を寄せ合って、集の力でニッチな市場を掘り起こし、チャレンジャー、トップリーダーの道を築くことに「ありたい姿」を描きたい。
志を共にする経営者の条件は、己の欲を捨て、集の利益を優先し貢献するパートナーシップ精神である。得意技を活かしたい経営者は名乗り出てください。



Shin Nagayama