一眼レフデジカメが普及してきました。僕も愛用していますが、僕なりの使い方をメモっていきます。

ここでは山野草ファンとして、撮影に関する僕のノウハウ、成功談、失敗談を書いていきます。

カメラ片手の山歩き

山野草早分かり写真辞典


2006/4/30撮影
Canon-20D マクロ50mm
撮影例
 
 チゴユリ

 
 コガネネコノメソウ

 
 ナガバノスミレサイシン

 
 フモトスミレ


勝手なことを書き下ろしますが、責任は負いかねます。あなた自身で判断して下さい。


●カメラを首にぶらさげる訳

山を歩くときは、必ずカメラを首にぶら下げて歩いている。どんなチャンスにも即、対応できるよう心掛けている。一眼レフは重いからとザックにしまい込むと、いちいち出すのが面倒くさくもなる。

最近は歳のせいかバランスを崩して転ぶことがある。前に転ぶとカメラを傷つけることになる。普段は左手でカメラを持つか、ベストのファスナーを半分開けて鳩尾に固定する。岩場や下りは気をつけたいが、やっぱり直ぐに取り出せる位置にカメラはありたい。


●イエロー、ピンクのビビット飛び。

フクジュソウ、シナノキンバイなどの撮影で、ベタ黄に飛んでしまったことはありませんか。サクラソウの濃いピンクでも同様の結果になることは多い。ビビットなハレーション状態で手の施しようがない。

このような原色の野草は、適正露出からアンダーで数枚押さえておくべきでしょう。
気をつけたいことが、忘れがちな現像パラメーター。カメラ側の設定値を見直して下さい。彩度補整がプラスになっていると危険です。初期設定はノーマルベター。


●マクロレンズは標準マクロ50mmから。

山仲間が一眼レフデジカメを新調した。カメラ屋のすすめで、野草撮影用にマクロは100mmを手に入れたという。何を基準にすすめたか。初めてマクロを持つなら標準50mmマクロが断然いいはずだ。価格も使い勝手もはるかに勝っている。

ちなみにキャノンの価格を比較すると、
50mmは42,000円
100mmは82,000円
お店はどちらを売りたくなるか?

使い勝手から考えると
山野草のほとんどは小さく、アップするので手ブレが起きやすい。焦点距離が短いほど有利になる。少なくとも二倍の有利さは50mmにある。
被写界深度、つまりピントの合う奥行きも、単純に考えれば50mmは100mmより二倍は合焦範囲が広くなる。ピンボケの失敗ははるかに減少できる。

以上ふたつの条件を考えると、二倍×二倍で、4倍の使いやすさが5ommコンパクトマクロにある。

ちなみに僕の野草写真はすべて50mmマクロです。これを使いこなしてから、新たなイメージに挑戦したいときに、中間リングで接写したり、100mmのボケ味を考えるようにするといい。



●ホワイトバランスについて

オートホワイトバランスに頼ってはいけません。自動設定の基準は回りの色に左右されるので、本当の野草の色が再現できなくなります。厳密には色温度を測定しますが、晴れマーク、曇りマークで撮る方がベターです。特に再現の難しい青紫系に困っている人へはオススメです。以前、曇りマークでは失敗しました。アンバー系の色カブリは、後の補整が難しい。

僕は今までの経緯(キャノンの場合)と経験で、常に晴れマークに設定してあります。後のフォトショップ現像処理で対処しています。色相と彩度で調整します。


●自動焦点は使っていません

接写の場合、どこにピントを合わせるかが微妙です。だからオートフォーカスはオフにして、ファインダーを覗きながら合わせる場所を決めてシャッターを押しています。あとでシマッタと後悔しないよう、微妙に焦点リングをずらしながら複数枚撮ります。


●コンパクトカメラとの優位性を活かす

一眼レフの優位性は感度アップと、レンズ絞り・シャッター速度の相関性による背景処理にある。コンパクトカメラはレンズ焦点距離が短いために、被写体とバックにピントが合い、構図がゴチャゴチャした煩わしい仕上がりになってしまう。一眼レフデジカメのレンズは焦点距離が長いために(50mm標準で80mm長焦点相当)、回りの背景を自分の意図するよう自在にボカすことができる。これが最も大きな機能である。

野草は雑草と同居することが多いので、いかに被写体の回りを省略するかが重要。枯葉や枯れ枝を取り除いたり、前にある邪魔な葉っぱをどう処理するか、そのあたりに注意すると、構図が締まってきます。わざと枯れ枝を利用することもありますが。


●シャープ補正でエッジを立てる

リサイズ加工すると、画像のシャープさが失われることがあります。現像処理の最後にシャープネス補正をして下さい。
フィルター→シャープ→アンシャープマスク
適用量  50〜100max.
半径   1.0
しきい値 0
ウェブ仕様では100max.で調整しています。

何もかもアンシャープマスクを使うことには危険です。コントラスト差のある部分を強調するため、クッキリした画像になりますが、ポートレートのような雰囲気重視の場合はシミやソバカスまで強調されることになります。ノイズを強調することになるので、画質の荒れに気をつけて下さい。


●ミスの少ない測光と露出


測光モードはミスの少ない評価測光にしている。
野草と背景を考えると、一般的には花のほうが明るいので、適正からアンダー方向へ露出補整する。通常の露出補整は、0〜-1。白花はバックが暗いと、-2でも露出オーバーになることがある。そんなときはマニュアルモードで補整しなければならない。

黄色の花は厄介で、適正ではベタ黄になって質感が潰れることが多い。-1を基準にするとミスは少ない。
逆光の場合はアンダーになるので、逆に+1〜+2のオーバー方向へ補整します。



●ピンボケ、手ブレに細心の注意を。

ウェブ品質やサービス版プリントではごまかせても、拡大してみるとピンボケ写真はかなり多い。アマチュアは特に多く、注意が足りない。失敗がないよう、プロは必ず三脚で固定する。山歩きでは、三脚は行動を鈍らせるため、手持ちに徹している。しかし、シャッタースピードは高速を意識している。まずは、ピンボケ、手ブレのない写真を撮ることが第一条件である。

●三脚で野草を撮らないように。

最近のデジカメは感度アップしても画質が劣化しにくい。ISO400までなら遜色なく撮れる。野草は風に揺れるので、ほとんどの場合、三脚は意味をなさない。僕は機動性を優先して三脚は使わない。肘でカメラを固定して撮っている。場合によっては腹這い姿勢で撮っている。

なぜ、三脚を使わないよう指導するのか。
三脚の三点が野草のフィールドを痛めつけている。被写体のアングルを微妙に変える必要があるため、辺りの植物を踏み荒らすことになる。その点、身体の肘は軟着陸させるため、痛みの具合が軽減される。今は花が咲いていなくても、フィールドには時期になれば咲く植物が地中で待っている。
足助飯盛山のカタクリは、いつも虎ロープをまたいだ三脚の列に悲鳴を発している。


●山野草撮影はISO400標準設定

あとでガッカリしないように、手ブレ、ピンボケだけは防ぎたいものです。そのための標準設定を決めておくべきです。僕の場合は以下の通り。

感度 ISO400
シャッター速度優先 1/125sec.

シャッタースピードは、接写すればするほど、倍率を高めれば高めるほど速く設定します。暗い谷間では仕方なく感度を上げることもあります。ISO800, ISO1600まで。それでも暗いときは、1/60sec.で撮ります。そんな時は肘をしっかり固定して、息を止めて何枚も撮ります。

絞りは好みですが、バックをボカして処理するためにできるだけ開けます。被写体と絞り値はセンスです。経験を積んでイメージを創って下さい。マクロで最接近すると、開放値では被写界深度が極端に浅くなります。絞りは、ボケ味を楽しむならいいのですが、花の概要にピンを合わせるには、5.6またはそれ以上に絞り込むべきでしょう。


●Jpeg 保存にご注意

パソコンに取り込んだ原画を開き、トリミング、リサイズ処理したものは、必ず別名で保存し、原画に上書きしないこと。原画は原画として保存しておいて下さい。

加工したものは別名で保存する。保存形式にJpegを使う場合の注意として、開いては加工し、上書き保存すると、どんどん画像は劣化していきます。



●フォトショップの画像処理
 Photo Shop (Adobe)

一眼レフデジカメの画像処理は、コンパクトカメラのように派手な発色処理をせず、忠実な色再現設計になっています。両者を比較すると、一見コンパクトカメラの方がよく見えます。いわば擬色処理です。

山野草の撮影条件は、好んで日影、曇天を選択するので「眠い」感じの仕上がりになることが多い。これを補正するために、フォトショップ現像処理が大切です。

●レベル補正
イメージ→色調補正→レベル補正
明度段階、コントラストを補正します。RGB全チャンネルで、通常0〜255の全域にデータがあることを確認します。特殊な効果を出す以外は、不足しているデータ域まで両端の△をスライドして下さい。真ん中の△でコントラストを調整します。±20までを限度にしています。それ以上は画質を低下させることが多い。

●色相・彩度補正

イメージ→色調補正→色相・彩度
春先は回りの枯葉を写し込んで、花は赤味を帯びます。回りが新緑色なら、緑カブリになります。これを色相で補正します。鮮やかにしたいときは彩度を調整します。

ただし、やり過ぎは画質を極端に劣化させます。
色相は±5max.に止めて下さい。
彩度は+20max.が限度でしょう。

黄色系は反応が激しく、著しく画質を変えます。微妙な調整に心掛けて下さい。

画質の劣化を防ぐ方法として、16ビット処理が有効です。イメージ→モード→16ビットを選んで処理して下さい。保存時にもとへ戻して8ビットにして下さい。

ウェブ用途の場合はそれほど神経質になる必要はありませんが、現像処理の順序は以下のように処理しています。
1.レベル補正 明度とコントラスト、焼込
2.色調補整  色相と彩度の補整
3.トリミング 画面構成を考える
4.リサイズ  ウェブサイズに合わせる
5.シャープ  アンシャープマスク

アナログの時代は暗室で、焼き込み、覆い焼きをしました。デジタルでは選択範囲ツールで対処します。ぼかしの値設定で自由自在に。


●片思いの目線と角度

一般的には真正面から相手を見つめる度胸はありません。角度を意識するほうが自然です。免許証の写真に魅力を感じますか。真正面は味気ないことが多い。「迷ったら斜に構えよ」。これは格言です。

目線も重要です。上から威圧的に語りかけたら、相手は萎縮します。同じ目線まで下げると、相手の心が見えてきます。


●背景でストーリィを描く

背景にストーリィ性を持たせるようにすると、画面構成に統一感がでてきます。ローキーかハイキーの明るさと構図バランス。背景の距離感とボケ味。被写体回りの注意深い処理。これらがレベルを決める技になりそうですね。


Shin Nagayama

カメラ片手の山歩き山野草早分かり写真辞典