レブンアツモリソウ デジカメ山野草トレッキング
レブンアツモリソウ
2007.6.12 礼文島高山植物園・北鉄府自生地にて
レブンアツモリソウ【礼文敦盛草】
ラン科アツモリソウ属 絶滅危惧種IB類
アツモリソウの変種で礼文島にだけ自生する。
花は赤紫色ではなく淡黄色。山地の草原、疎林の下に育つ。
現在では礼文島北鉄府だけに自生し保護されている。
草丈25〜40cm。唇弁は大きな袋状で長さ3.5〜5cm。
側花弁は広卵型で先は尖る。花期5月下旬〜6月中旬。
騙しによる受粉の仕組み
ニセハイイロマルハナバチの女王蜂が花粉の送粉者であることが、研究で明らかになった。蜜を分泌しないこの花に、間違えて袋状の唇弁に落ち込むと、脱出経路に準備されている花粉が付着する。この行為が別の
花で繰り返されるとき、雌しべの柱頭に花粉が付着して受粉が成立する。この偶発的な営みでは増殖率に限りがあるので、大切に見守りたい野草である。
関心を持つきっかけ
入笠山の山小屋では、キバナノアツモリソウを大切に育てている。これも貴重な絶滅危惧種だが、女主が嘆いていた。柵で囲ってあるのに盗掘被害に遭う。情けない話である。木祖の知人の話では、マニアの間では一鉢数万円で取引されているそうだ。野草マニアの過熱が種の生命を奪いかねない。これらの花が育つのに7〜10年の歳月がかかることを考えてほしい。
礼文に出かけるなら
旅に出る前に高山植物園に電話を入れた。レブンアツモリソウの話を聞きたい。快く電話に出てくれた人が飯野拓也さん。「12日の午前9時にお待ちしています」。という訳で当日を迎えた。
飯野さんは礼文町役場産業課高山植物培養センター主任である。昭和62年、卒業と同時に礼文町に勤めた。すでに盗掘が問題化していたので、それ以来ずっとレブンアツモリソウと共に歩いてきた。平成元年に高山植物培養センターが完成し、絶滅の危機に瀕していた花の無菌培養に成功したのが平成7年。花を咲かせて苦労が報われたのが平成13年とのこと。平成18年6月14日には1221個の花を確認している。彼の青春は花と共に20年を迎えたことになる。継続は力であることを実感する偉大な功績といえる。
礼文町は漁業と観光の島である。花の浮島と言われるほど、花が観光の目玉になっていることは事実だ。観光客は花の開花時期に合わせて6月から右上がりになり、7月にピークを迎えて8月には下降線をたどる。できれば8月いっぱいは観光客を引っ張りたいのが町の考え方であろう。その意味もあり、現在では冷蔵庫による低温保存で開花時期を調整する試みが始まっている。自然の摂理に反する行為かも知れないが、最果ての島が生きる知恵でもある。
この島は日本で唯一温帯系植物の進入を拒み、寒帯系(高山)植物を囲い込んだ珍しい植生域である。この花々を守ることが島民の使命であり、自然の豊かな財産を子孫に残してほしい。今年から小中学校にレブンアツモリソウを貸し出しているという。記録を取ったり絵日記を描いたり。若い人の植物への関心と、自然と共生するマナーを体得できれば将来は明るい。人工培養したものを自然界に放すことには反対する人もいる。しかし、島全体が花でおおわれることを夢見たい。植物を慈しみ育てることだけに人の手を使い、人工開発は一切しないことだ。特に西海岸は自然の宝庫である。そのままの自然を保ちたい。
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