森の健康診断
エコ最前線 オール間伐材ヒノキの家-2
岐阜県恵那市岩村町 佐藤邸
2007年6月24日13:00〜15:40 取材/長山伸作
三年前に第一棟を初めて建てて以来、9棟目になる佐藤邸にみんなが集まった。はるばる浜松から訪れた「オール間伐材の家」の施主さんたちに交じって森の健康診断関係者も集合し大いに語った。

 
 外観北東面(玄関) 外観からは総ヒノキの家を感じさせない間伐材2400本の家


左/外観南西面 中/玄関 右/濡れ縁
堅牢15センチ方形の亜鉛メッキ鉄骨をコンクリート土台に埋め込んである。縁の下の風通しに配慮。


左/吹き抜けの居間 中/二階から居間を俯瞰 右/二階寝室入口
間仕切りも10センチ角材を標準仕様。角材パネルはボルトを貫通させて固定している。頑固な堀尾さんの設計思想が吹き込まれている。
居間には薪の暖炉が据えられ、カーボンニュートラルへの配慮がうかがえる。



KTS代表取締役 堀尾憲市氏
〒509-7205
岐阜県恵那市長島町中野1269-501
Tel.0573-20-0020
Fax.0573-20-0018

堀尾憲市氏略歴
昭和22年、岩村生まれ。リコー時計就職を始めとして、いろんな業界を渡り歩き、現在は一級建築士の義兄と間伐材工法を開発、展開している。


岩村への途中、恵那で道草。
貴重な野草、トキソウを撮影。

山野草・早分かり辞典

間伐ヒノキ材2000本を使った「木づかいの住まい」

ヒノキの香りに包まれた佐藤邸に、次から次に訪れる人たち。生憎の梅雨空だが20人を越える訪問者で熱気ムンムン。堀尾さんが建てた間伐材ヒノキの家について、施主や専門家の意見を噴出させ、これからの新たな方向性を探る。仕掛け人、丹羽さんの目論見やいかに。


いざ蓋を開けてみると、施主の声は「満足の声」ばかり。浜松の山本さん、名古屋の近藤さん、恵那の早川さん、みんな異口同音の回答が返ってくる。「木の温もりを肌で感じる」。「夏でもクーラー不要です」。木のやさしさ、住みやすさに加え、無垢の木に包まれる暮らしに誇りを持っている。意地の悪い質問を仕掛けても、クレームらしい返事が返ってこない。生まれてまだ3年足らずの工法なので、試されるのは今後10年。施主の声をいかに技術に反映させて完成度を高めていくか。住みやすさの追求は施主さんとのコミュニケーションで解決していく。今回の集いも、堀尾さんにしてみれば「問題探し」の場にしたかったはず。

丹羽さんが切り口を変える。いつの間にか、日本の人工林と森の再生勉強会になった。世界的には森林減少が進み、環境問題として大きくクローズアップされている。ところが日本は逆転現象にあり、木を伐採して利用、循環しないと荒廃することを知らない人が多い。国土の崩壊危機につながる事実を知らない。「木を消費することは悪いこと」と決め付けている人が意外と多いことを嘆いている。僕が施主に質問してみた。「皆さんの住まいが環境問題に大きく貢献していることを、どう思いますか?」。この住まいを選んだ理由に、環境を考慮した人は残念ながらいませんでした。

彼らは素朴に木を愛する人たちでした。

マーケティングの観点からいえば、ターゲットが広がる。環境にこだわる人よりも、本物の木を愛する人を囲い込む販促が必要になってくる。シックハウス症候群が問題になったが、ヒノキ過敏のアレルギーもあるとのこと。こういう細かい問題もマニュアル化して、里山型間伐材ハウスの標準仕様を作り、日本全国どこの工務店でも施工できる地産地消のシステムを完成させれば、堀尾ハウスの理想に近づくものと思う。木を愛する人たちを囲い込んで施主となし、環境優等生として口コミ宣伝で輪を拡げる。1年3棟の実績を、3年後300棟を設定できる仕組みづくりに挑戦してほしい。

トップへ戻る


Copyright 2005 Shin Nagayama All rights reserved