森の健康診断
森林と木材の価値ある幸せ関係 【東濃の旅】

2008年1月26日
主催/えな山村塾(NPO法人夕立山森林塾・山里文化研究所)
9時にJR恵那駅集合。貸切バス一台で東濃の山村を周回
取材/夕立山森林塾 長山伸作


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左/ほりおハウス 中/間伐材ヒノキの部屋 右/省エネ木造住宅



ほりおハウス 堀尾憲市氏
〒509-7205
岐阜県恵那市長島町中野1269-501
Tel.0573-20-0020
Fax.0573-20-0018


吹き抜けの階段踊り場からリビングを俯瞰する。

50坪の建物に2500本の間伐材を組み込む
◆痛快!地球環境を守る炭素固定、総ヒノキ100年住宅

わが国では安価な外材の商社輸入により林業が衰退、森林資源が放置されている。国土の三分の二を占める森林が瀕死の状態にあり、これを放置すれば土砂崩れや河川氾濫の原因にもなる。特に人工林は人手が入らず非常事態にある。人工林の間伐は、樹木や土壌に太陽光を招いて光合成を活発にし、CO2を吸収して地球温暖化問題を解決に導くと共に豊かな山を再生させる。

住まいは住むほどに価値が上がる。
その人工林間伐材を使って100年間、炭素を固定する木造住宅を見学した。確かにムクの間伐材は歪がでることもあり、クレームを嫌うハウスメーカーは敬遠して輸入集成材を多用する。しかし、施主と施工業者が一体となって住まいを管理しマメに育てることを続ければ、住まいの価値は高まっていく。20年経過したら、建物の価値が高まるビジネスモデルが成り立つはずだ。

欧州の住宅寿命は80年といわれる。サブプライムで問題化したアメリカでも50年の寿命がある。しかし、日本の住宅寿命はたった30年しかない。一生住むことができない。20年も経てば資産価値がゼロになる、余りにも短命な耐久消費財なのである。100年住宅は、おそらく20年経つと資産価値が上がるかもしれない。何よりうれしいことは、30年でスクラップアンドビルドされる住宅建築と産業廃棄物を、三倍の100年間抑制できることだろう。ライフサイクルの短縮化でビジネスの延命を図る行為は、「エゴの悪」と言える環境時代に突入している。


リビングの玄関側で施主の挨拶を受ける・リビング北側に水周り


寝室と和室が並ぶ。和室南側の障子には広いテラスから陽光が射しこむ


キッチン・銘木の一枚テーブル・玄関

ヒノキの香りにはフィトンチッドが含まれていて、抗菌作用やセラピー効果があるといわれる。住まいとは、風土に合った自然素材を活用することで、健康な暮らしが得られそうである。100年も続いたらバチが当たりそうだ。

堀尾さんの間伐材ハウス
岩村のほりおハウス



自由設計工房「楽園住宅」

金子建築工業(株)
一級建築士事務所
岐阜県恵那市長島町正家1-5-5
Tel.0573-26-5122
Fax.0573-26-4117


2005年6月
(財)建築環境省エネルギー機構
●自立循環型住宅設計のための
 ガイドライン発行

このガイドラインに基づいて、我々が住む東濃地方の気象条件に合わせて、地元の桧材を使って、快適で安全・省エネなモデル住宅を建築し、性能評価を行ってみました。その結果、試算値とはいえ、ガイドラインの目指す2000年頃の標準的な一戸建て住宅の生活で消費される全エネルギー量の50%を上回る75%を削減することを可能にしました。
従来の1/4のエネルギーで快適に暮らせる。東濃の新しい民家モデルが普及すれば、住宅寿命が延び、地球温暖化防止にも貢献できます。さらに地元材の活用で森を守り、将来の子供たちのためによりよい地球環境が残せるのではないかと願っています。

 代表取締役 金子一弘
木造超省エネ・21世紀の東濃民家モデル
◆従来の1/4のエネルギー消費で持続可能な暮らしを提案

金子さんは勉強家である。50才代半ばにあって、まだまだ学習意欲に陰りが見えない。北欧を行き来しつつ、東濃の風土に合った新しい省エネ住宅の在り方を研究し、自宅に実証モデル住宅を建ててデータを出している。基本的な住宅設計から一歩踏み出して、快適性能を設計するという発想の転換が、CO2の排出を極端に抑える超省エネ住宅を創出する。

ソーラーパネルの太陽エネルギーを床下に蓄熱し、ゆるやかな空気の対流で部屋の隅々まで空調する内部構造は、地球環境への配慮が設計されている。この日、私たちが座り込んだ床の温度は25.8℃あった。(下写真のリビング)


加藤氏の自宅リビングルームを見学


楽園住宅モデルハウス内部
左/和室のルーバー 中/二階洋室 右/吹き抜けリビング



NPO法人奥矢作森林塾
〒509-7014
岐阜県恵那市串原1149-2
奥矢作レクリエーションセンター
Tel.0573-52-2411



丸太を繰り抜いてグラスウールを敷いた炭の火鉢。
矢作川に流れ込む流木を炭窯で食い止める
◆上流でのNPO作業が三河湾に至る流域を守っている

大島さんたちの活動には正直いって頭が下る。矢作川は、モノづくり愛知の根幹を成す豊田市、安城市、岡崎市を潤して海産物の宝庫、三河湾に至る。この上流域に上矢作があり、岐阜県から愛知県の広範な人工林を流域に抱えているため、大雨の都度、土砂崩れで流木が奥矢作湖に流れ込む。この流木を炭に変えて水源を守っている。


湖畔窯と流木炭化窯。右写真は大島さんとコーディネイターの原島さん。


土砂で埋まる奥矢作湖。右は湖畔窯の内部。


流木の山と炭化した流木の幹。

流木炭化窯。
窯の上部投入口は閉じられ、その上に砂が敷かれている。ここに寝そべると、冬でも暖かいので昼寝に最高だ。

2007年3月現在日本最大。
奥行10m,幅3m,深さ2m,容積60立米。
最高炭化温度800℃。炭化後冷却する黒炭方式。昔ながらの黒炭窯と同構造。巨大な窯なにで、地面を掘り下げてその中へ窯を構築してある。
点火から窯止めまで8〜10日間。
窯の冷却期間は14日間。
1回当たり60立米処理。
20立米の炭になるのが理想。
年間10回以上の炭化が可能。

夏になると炭焼き祭りが開催される。森と親しむ仲間のイベントに参加してみて下さい。

写真と文 長山 伸作


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