ご近所づき合いを大切にしている、
「ご近所ねっと」そのままの才媛。
「人が大好き」と言い切るだけあって、話し上手で如才ない。相手を退屈させない豊富な話題で、その場の雰囲気を和らげる。情報の引き出しをいくつ持っているのだろう。シワくちゃの私の歳に合った話が飛びだした。
「人は泣きながら生まれてくる。人は泣くたびに生まれ変わる」
荒良寛さんの語録だという。年寄りにはジーンとくる素晴らしい言葉である。ドイツにいた頃のゲーテの詩が、その場で直ぐに思い出された。「涙で枕を濡らした夜を、知らない人は哀れである」と言うような訳だが、苦い経験が人を成長へ導く。にこやかな表情ではあるが、過去には例えられないいろんな体験があったのだろう。
二男一女の子に恵まれ、五人家族で昭和区に住んでいるという伊藤早千江さん。実は生粋の名古屋人ではない。穏和な性格の通り、温暖な静岡産なのである。ご主人が親の事業を継ぐために、19年前に名古屋へ引っ越してきたと言う。彼女は元来キャリアタイプで、学生当時から選挙戦のウグイス嬢を買って出たり、県職員として消費者団体の面倒を見たり、テレビ局勤めをしたり、とにかく忙しくしていないと、気がすまない性格らしい。そんな彼女が名古屋に移り住んで、子育てしながら、まず一番にやったことが近所づき合い。生協の仲間入りに始まり、運動会、子供会から社協センターの講座通い。ここで出会った飯田女学院の先生から、女性の働く姿に感動して、起業家魂が芽生えてきた。義父が経営する会社関係にダスキンを見つけ、13年前にフランチャイズ店を開業した。
男子禁制、女性スタッフだけのプロのお掃除屋さんである。将来的な高齢化社会、核家族化で起こりうる地域住民の活動不安や情報不足の助っ人として立ち上がったのである。得てして女性だけの職場は人間関係が難しいと言われるが、持ち前の性格で見事にリーダーシップをとっている。常に一歩前に出て先陣に立ち、スタッフのイイトコ探しをしていると言う。笑顔が美しい人は得をする。底抜けに明るい性格で、初対面でもすぐに溶け込ませてしまう天性の能力を備えている。一般家庭に入り込んでお掃除をしちゃうんだから、相手から信用されることが大切。そのためのスタッフ教育にも熱心で、自らもサービスマスターの資格を次々と取得している。きめ細かなサービスで、お客さまに安心していただき、信用を勝ち取っていけば、女性スタッフで「家庭市場ナンバーワン」の目標も夢ではない。将来が楽しみである。専務は何にもセンム、と巷では言われるが、おっと、どっこい、この人は違う。
事業は人で育てるもの。スタッフに事業継承できたら静岡に戻り、土を耕しながら循環型の人生を楽しみたいという。山の幸を持って海辺に行き、新鮮な海の幸と物々交換。温暖でのどかな風景が浮かび上がってくる。富士山は秀麗である。
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