名古屋のほぼ中心に当たる鶴舞公園の近くに「つながれっとNAGOYA」がある。名古屋市男女平等参画推進センターといい、ここの運営にNPO団体の一員としてお手伝いをしている女性を訪ねた。真新しいエントランス正面のフロントで面会の手続きをしようと思ったら、目ざとく彼女が出てきた。その人は伊藤静香さん。初対面ではない。私が経営する会社を過去に訪れている。行政の情報誌に、女性社員の記事を掲載したいとのことで。今日は逆の立場。私が伊藤静香さんを取材するのである。彼女は、私たち中小企業家有志で立ち上げた、名古屋の地域活性化ホームページ「ご近所ねっと」のコラムにも寄稿をお願いしている間柄である。コラム原稿を見ていて、この人の家族との接し方に興味を持ち、取材をお願いしました。前置きはこれぐらいにして・・・。
家族は三人。ご主人はお医者さん。二人の間には一人娘がある。木曽川に近い、尾張濃尾の豊かな穀倉地帯扶桑町で生まれた彼女は、この地域では珍しく、サラリーマン家庭で育った。学生時代から付き合っていたご主人との結婚を機に、当時の定番女性事務職、お茶汲み・コピー取り・電話番にピリオドを打ち、主婦業に専念する。しかし、意気込みとは裏腹に、若いお医者さんは月に10日は病院泊まり。甘い新婚生活の夢とのギャップは、誰でも味わうことではあるが、国際協力事業団(JICA)のエジプト生活から、彼女に変化が現れる。海外生活の寂しさから、友人向けメール「エジプト通信」を書くようになり、その反応から、ものを書くことに興味を持つようになった。
親業訓練インストラクター 帰国後にNPO法人ウイン女性企画主催の「メディアライターの養成講座」を受講して、メーリングリストによる新たな仲間との交信も始まった。子供が生まれ、夫の転勤で多治見に住み、理想の母親像を求めて悩んでいるときに、「親業訓練」と出会う。ここで子供との接し方を学び、実践し、今では親業訓練協会のインストラクターとして、子育て学習会を開いている。親業訓練とは
1.子供の話を聞くこと。
2.親の気持ちを子供に伝えること。
3.対立が起きたときの解決方法。
ロールプレーと家庭での実践を繰り返しながら、コミュニケーションを通じて親子間の理解を深め、温かな血が通う家庭生活を築き上げていく。親業訓練という言葉はハードなイメージに取られやすいが、会話の大切さと思いやり、人への心配りを養うコミュニケーションの場なのであろう。彼女は「親業を通じて出逢った仲間がいたから、今の自分がある」と言う。また、ウイン女性企画に出会って、自分の可能性を未来に開いて行きたいと思うようになったそうである。
彼女は生花草月流の師範。とはいっても教える訳ではなく、趣味として続けている。スキーは家族共通の趣味として、読書は自己啓発に暇を見つけて読みあさっている。こういう人には暇という時間はないだろう。ましてや親業訓練は、対面の会話が重要である。相手を理解することは、時として忍耐が必要であり、時間に急き立てられる現代では、時を費やす代償が大きい。インストラクターの仕事の大変さが分かる。でも頑張ってほしい。最近問題になっている家庭内暴力や虐待行為も、基本的なコミュニケーション環境の欠如に起因していることが多いように思う。
彼女は言う。「私らしくイキイキと生きていきたい」。
これからも輝く女性として、明るい社会のために、歩いて行くことを願っています。
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