今回紹介するネットショップ運営者は昭和40年生まれの若手名古屋っ子、菊谷勝彦さん。お店は名古屋駅から西へ真っ直ぐ行った古い街並みにあり、新装した店舗がよく目立つ。正面入口上の天然銘木に「香源」と刻まれている。名前の通り、お香(薫物)や線香を扱っている。もともと卸売業であるが小売も営み、それにもう一つの営業チャンネルとして、息子である勝彦さんがネットショップを開店させた。1999年12月10日、愛妻家は奥様の誕生日に合わせてホームページをオープンさせた。
すでに4年の月日が流れている。始めの品揃えは線香を主に20品目で、買い物カゴのシステムもDIONが提供するCGIのカンタンなものだつた。初期投資を圧縮して、動向を見ながらの展開を考える積もりだったのだろう。7ヶ月間注文ゼロが続き、八ヶ月目に異業種交流仲間の義理買い初注文が二通入った。
立ち上げのきっかけは、ご存知ネットショップの(株)日新、田島さんである。彼の指導で決断し、翌年にネットインテンドと呼ばれたIT研究会で、「ネットは商売になる」を確信して、その気になった。自ら新たな道、イバラの道を選択し、パソコンの前に釘付けとなる苦労の人生が始まった。「石の上にも三年」は古今を問わず、IT時代でも変わらないようである。今では苦労の甲斐があり、数千万円の年商で家業の利益に貢献できるようになった。息子の新規IT事業の面目躍如である。私の知る限り、愛知の異業種交流仲間では二番目の成功例と言えよう。
奥様と二人三脚
勝彦さんがネットショップの店長でありMD、運営兼務。奥様が企画担当であり、メルマガ発行人兼出荷係である。左の写真でも分かるように、対面でお店も手伝っているから、多忙な毎日を送っている。話はちょっと逸れますが、外国の友人への贈り物を彼女に依頼したら、如才なくにっこり笑って、日本の伝統文化よろしく、美しい水引きでラッピングしてくれた。こういう気遣いがお客様との絆を強くするのでしょうね。
さて、今後の展開は、と訊ねてみたら、「今期目標1億円」と即座に応えた。ターゲットも絞り込まれている。25〜40才代の女性で、6月のフルリニューアルオープンには、英語、フランス語圏対応になるそうだ。ネットショップは3店舗、本店、楽天店、それにYahoo店である。夢は益々広がっていく。理解し合えるオシドリ夫婦の成せる技だろう。基本的に通販はネットに限らず、5割以上の粗利と、客単価1万円以上が必要といわれる。無店舗だから安上がりと、短絡的に考える人が多いようだが、人件費も含めた運営コストは馬鹿にならない。他力本願では成功しにくいインターネットビジネスの落とし穴は、IT進化のスピードを計算しない謝った事業計画にありそうです。安易な計画で参入することは危険でしょう。
何はともあれ、香道という特殊な業界において展開したことが良かったと思われる。普通なら、ターゲットが年輩層に偏るので、インターネットには不向きと考え勝ちであるが、「香り」に関しては欧米でも昔から市民権を得ており、現代では逆輸入現象もある。若者の間でも、静かなブームになって来ている。
夫婦二人三脚で、世界の「香源」になる日を願っています。
「香道の知識」
香道は茶道・華道と並び日本を代表する伝統文化であり、作法の格式は最も高いと言われています。その歴史は唐人、鑑真まで溯り、500年の精神文化を築き上げています。我が国には二つの流派、御家流と志野流があります。志野流の本家は名古屋にあります。
「香を聞く」
お香はその薫りを鼻でかぐとか臭うとは言わず、「聞く」と言います。「香を聞く」。初めての人には分かりませんね。
右写真は香木・沈丁花でインドネシアのボルネオ産。グラム当たり500円以上とのこと。
ちなみに、ネットショップ「香源」の人気商品は六種の薫物(むくさのたきもの)
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