早朝7時に八島湿原駐車場着。すでに十数台の車が停まっている。空は雲に覆われているが、今日の予報は晴れ。登山靴に履き替え、いつも歩く八島湿原とは反対の方角に登り始める。鷲ヶ峰は八島湿原の東にあたり、和田峠との中間点に位置する。往復2時間程度の軽い山歩きである。空の雲が薄れ、稜線を遮るものもなく、広がる視界を満喫しながらのんびり歩を進める。振り返れば八島湿原の彼方に車山、蓼科山が浮かんでいる。まだ春には早く、湿原も山並みの斜面も枯葉色に染まってはいるが、フキノトウだけは白くはじけて春の到来を告げている。岩の間から顔を出しているタチツボスミレと黄色い毛虫を枝に這わせているようなネコヤナギが彩りをそえている。高度を上げるに従い、スカイラインに白い山並みが浮かんでくる。南アルプス、中央アルプスに続いて御岳、乗鞍岳、北アルプスまで見えてきた。暖かな陽光に霞んではいるが、うっとりするほど優しい笑顔を見せている。
ケルンが積まれた稜線の頂きに、なぜか一輪だけショウジョウバカマが咲いている。腰をおろして稜線に目をやると、鷲ヶ峰山頂へ続く峰の延長線上に槍ヶ岳が望まれる。 ビィーナスラインが無料になったこととゴールデンウイークを考え合わすと、渋滞で遅刻することもあり得るので、山頂を踏むことはあきらめて、引き返すことにした。夏の夜明けをここで迎えたいものである。
ここからなら3時間で硫黄岳山頂に立てる。日帰り可能な行程が組める。
ゲートをくぐって夏沢沿いに少し歩いてみた。雪解けの豊富な水が滝の音を騒がしくしているが、絵になる流れである。白樺の新緑にはまだ一ヶ月は早いようだ。タチツボスミレがチラホラ。のぞき込んで観察すると、アバタもえくぼとはいえ、美しい表情には巡り会えない。そんな中でも右の写真はまさしく美人である。
駐車場に戻ると、ぬかるみで立ち往生している四駆が一台。手伝って牽引し、引っぱり出したが、蛇が一匹、車の犠牲になっていた。私のタイヤが加害者だったかは不明だが、妻の悲鳴がエンジンの音よりも凄まじく谷間に響いた。
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