2時起床、2時半出発。暖か過ぎる。
ナビの目的地に立杭をセットして、中間点を一宮IC、三田西ICを選択。全行程約230km。夜中のハイウエイには星が降っている。名神から、中国道、舞鶴道に入っても霧がない。初めて訪れる地、しかも夜中の霧を想定していたので、分かりやすい立杭、陶の郷を選んだ。予定通り、5時に駐車場に着いた。残念ながら霧は下りていない。とりあえず6時まで仮眠することにした。
センターハウスの右手に虚空蔵山登山口を見つけ、歩き始める。かすかに山並みがうかがえる。舗装路はキャンプ場の中を抜けてアカマツ林を通り、地道になるとヒノキの植林帯に入る。ヘッドライトを頼りに、きつくもないなだらかなステップを登っていく。普段は遅れ勝ちな妻の足取りが速い。私の横へ並ぼうとして踵に当たる。注意すると「怖いから」と言う。「イノシシが出る」と言う。他愛ない話である。思わず智恵子抄を思い出して、ひとり笑い。つづら折れを曲がる度に空は明るくなってくる。まわりが雑木林になる頃には、谷を挟んだ山がはっきりうかがえるようになり、ほどなく稜線に出た。ここを左に折れると、道の勾配がきつくなる。登山道はプラスチックのステップで整備されている。歩きやすいが情緒がない。
アカマツの木々が所々で切り倒され、残された根っ子の幹に番号が貼られている。病に犯されたものを、麓の登窯の燃料にでもするのだろうか。
汗ばむ頃に藍本からの道が合流する。朝日が眠そうに雲間から覗く。道はますます勾配を増すが、なだらかになるとあっけなく丹波岩に出る。岩上から望む景色に霧海は見当たらない。とりあえず、山頂に向かう。ホンのひとこぎで頂きに立てた。のんびりで丁度1時間の歩程である。暖かいとは言え、冬の朝である。写真を撮る指が冷たくなってくる。ここより見晴らしのきく丹波岩でゆっくり休むことにした。
丹波岩の岩陰に坐り、朝食前に熱燗をぐいっ。妻はポットのコーヒーを温かそうに飲んでいる。北方の視界は山頂に遮られるが、東西南は開けている。ときどき太陽が雲間から顔を覗かせるが、ぼおっとした眠気眼の景観である。気が付けば鳥のさえずりもある。麓が近いせいか、生活音も聞こえてくる。霧海を期待した初めての丹波は、あっさり私を裏切ってくれた。「またおいで」とでも言いたげに。
|