予想に反して、温帯性低気圧に成り下がった台風4号は、尻尾の前線で山地に雨を残した。
さるぼぼさんの快気オフを中止したにもかかわらず、当人を含んで総勢6人の北尾根未練仲間がJR関ヶ原駅に集結。予定より10分遅れで伊吹山ドライブウエイゲートを通過する。程なく電話がかかり、石田さんの声。「僕を置き去りにしないでよ」。最終集合場所、ゲート前には車が一台も確認できなかったので、そのまま通り過ぎたが、彼はその手前の売店駐車場で待っていたとか。
濃いガスの中を2台の車で慎重に走る。ガスの上に出られるといいが、と思っている矢先に明るくなり、雲上に出た。最高の気分である。写真におさめるほどの雲海はないが、吹き上げる雲の彼方に麓の風景が広がっている。日頃の行いがいいと、こんなものである。道は滋賀県側から岐阜県側へ回り込み、大垣の街並みから左へ、今日歩く北尾根が視界に入ってくる。9時過ぎに、北尾根取り付きの駐車場に着く。
思ったより風もなく、暖かい。それぞれに準備にかかる。今日の撮影モードに備え、雨具の上からスパッツで防水対策。更に滑り止めに軽アイゼンを装着する。病み上がりとは言え、リハビリに専念して見事復帰した伊吹山の主、さるぼぼさんをトップに静馬ヶ原へ一旦下ってから登りにかかる。すぐにグンナイフウロがお出迎え。まだ蕾のものも多いが、来週当たりは伊吹全山を覆い尽くすことだろう。ウマノアシガタを始めとするキンポウゲ科の黄色には、なぜかカメラが反応しない。すでに見飽きているとは言え、その数の多すぎることも一因で、不感症気味。黄色い花にはコキンバイ、ヤマブキソウ、イブキガラシ、ヒメレンゲなどが目につく。タニウツギ、ガクウツギ、ヒメウツギが今を盛りと咲き乱れている。エンレイソウはすでに実をつけ、ユキザサは終わりに近い。春の野花の命は短く移り変わりが激しい中で、ホウチャクソウだけは長生きしている。
ハナイカダ、チャルメルソウ、ガクウツギ、フタバアオイ、ナルコユリ クリック拡大表示
尾根筋は、滋賀県側から吹き上げるガスで霧情の中を歩く。私たちの撮影モードのんびり隊は、遅々として進まない。途中、伊吹の主がナイショの場所へ誘導してくれる。ランちゃんの株がいくつもあるが、美人がいない。すでに中高年に値するか。
薄暗い林間の尾根道を下り、登り返すと露岩をちりばめた明るい斜面に出る。去年はここで昼食を取り、国見峠から登ってきたS氏と車のキーを交換して縦走した。今回は無理をせず御座峰のピストンである。
展望こそないが、御座峰山頂は小広く、休憩には丁度いい。さるぼぼさん思いの妹さん手作りの朴葉寿司を頂く。「オイシイ」。私の定番、熱燗も回し飲み。それぞれの食材を思い思いにお裾分けして、賑やかな昼食タイムが過ぎる。
台風一過の翌日で回復も遅れているから、山を訪れる変わり者は我々だけとタカをくくっていたら、ナンノ何の、小広い山頂は、いつの間にか中高年グループでいっぱいになった。
帰路は同じ道を引き返す。新しい花を見つけようと目を皿にして歩くが、霧雨交じりで足元も不如意である。ひときわ小さいタニギキョウが、雨に打たれて萎えている。私の苦手な撮影対象の花が、ここにはふたつある。ヒメウツギとグンナイフウロである。どちらもこの時期には、よりどりみどりなのに、沢山あり過ぎて食傷気味か。グンナイフウロは花弁と花芯のバランスがとれない。最も邪魔になるのが透き通って見える額の存在である。そんなアンバランスを、今回は雨の滴が解消してくれた。まあまあの出来か。
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