山野草の写真好きが集まって、入道ヶ岳に登ることになった。NOIさんの呼びかけで、小岐須渓谷山の家駐車場に集合したのは都合5人。さるぼぼさんは前日急遽出張が入り、ドタキャンとなった。全員が私の車に乗り、林道を池ノ谷登山口まで乗り入れ、路側に停めて歩き始めた。春先の登山道は崩壊が進み、所々で土石に流されている。対面の野登山は採石で斜面がえぐり取られている。人間の自然破壊に、山の神が怒り、山を崩壊させているのかも知れない。池ノ谷左岸の急な斜面をジグザグに登る。歩き始めから、いやな登りである。沢を高巻きするように進み、崩れやすい斜面を慎重にトラバースして沢筋に出ると、今日のお目当て、ハナネコノメの群落場所に出る。小さくて見落としそうな花だ。赤い雄しべが美しい。全体に白い軟毛があるので、シロバナネコノメソウだろう。一斉に全員撮影モード。それぞれのポーズで無言の時が流れる。ひとしきり撮影してひと休み。ポットのコーヒーを飲みながらタバコに火をつける。みんな飽きもせず、腰が痛くなるような姿勢で、下を向いたまま。ウルサイ、と言われそうだが、「コーヒーはいかが?」。
一時間は費やしたと思う。時間を切って先に歩き始める。この先にはほとんど花はない。しばらくは沢沿いに登り、右岸を巻いてくぐり岩から鎖場を直登して左岸の急斜面を登ると避難小屋がある。この裏手の尾根沿いに道は続いている。次第にまわりの明るさが増し、枯れ木越しに野登山から仙ヶ岳の山並みが見えるようになった。後続を待って小休止をとる。さすがに暑く、水を補給する。C−NAさんが疲れた表情。「稜線が見えてきたから、山頂も遠くはないね」、などと騙しに似たねぎらいの言葉をかける。ちょっと白々しいか。小岐須からの道を合わせ、再び沢筋に出ると池ノ谷も源頭に近い雰囲気になる。雪解けの水音が消えると、残雪がちらほら。行く手に青空が広がり、開放的な笹原が支配するスカイラインにアセビの低木が踊るように立っている。あとは笹原を縦断すれば山頂である。
日溜まりの山頂で昼食をとり、お日様の恵みをいっぱいに受けて昼寝のひととき。妻の寝息で目を覚ます。平和なひととき。北ノ頭方面へ散策に出かけたUさん、NOIさんが帰るのを待って山頂を後にした。
アセビのトンネルをくぐり、二本松尾根を下る。激下りで膝が痛くなる頃に滝ヶ谷分岐に出る。ここを右に折れ、再び激下りで支尾根から沢に出る。ヤマルリソウにミヤマカタバミが咲いている。30分の撮影モード。滝ヶ谷の植生も興味深い。「バッテリーが切れた」。「メモリー残量が気になる」。こんな言葉にホッ。歩き始めたが、20分も経たない頃。「トウゴクサバノオだよ」、C−NAさんの声。全員一点集中で凍る。小さな花だがまことに可憐な美人である。激写、接写でまた30分。全員撮影好きだから、退屈することはないけれど、関西メンバーと一緒ならヒンシュクもの。さるぼぼさんには悪いけど、今日の収穫は大きい。ジダンダ踏む音が聞こえそうだ。
結局7時間を超す山歩きだったが、半分近くは撮影タイムの価値ある山行だった。植物に詳しいC−NAさん、NOIさんのおかげで、今日はまた賢くなったアーリィバードです。ありがとうございました。
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