森の健康診断 土岐川、庄内川源流の人工林

第1回・森の健康診断



丹羽健司さん
森の健康診断実行委員会世話役
伊勢三河湾流域ネットワーク


代表の柘植弘成さん(手前)
宮田照由さん(左後)

開会のあいさつに続き、森の健康診断について、概要と注意事項の説明がなされた。、地元行政と町民の協力なしにはできないことであり、彼らのガイドで林道奥までナビゲートしてもらったり、人工林の状況も聞くことができた。


診断終了後に戻った恵那キャンパスでは、彼らが炊き出した暖かい豚汁と五平餅(ごへだ)が待っていた。

関係者で、記事内写真が必要な方はご連絡下さい。原画データをお渡しします。メールは下記から
→→私のメール

土岐川・庄内川源流「森の健康診断」


10日ほど前に丹羽さんと会って森の話をしているうちに、急遽参加することになった。前夜からの雨で中止だろうと思ったが、山野草の調査で協力を得ている中部大学南先生が前夜から泊まっているとのことなので、他の相談もあり出かけた。何のことはない。熱心な市民が写真のように220人以上、体育館に集まっている。これほど森林に関心を持つ人々の多いことに驚かされた。説明の後、外に出て記念写真を撮り、グループに分かれて活動に入った。私たち第2グループは、
チームリーダー 西川早人さん (森林ボランティア)
コースガイド  中垣要一さん、土屋雅義さん(地元住民)
自然観察ガイド 南基泰さん(中部大学応用生物学部助教授)
緑のダム測定  横山貴史さん、桐山修平さん(中部大学生)
中京テレビスタッフ3名(11月上旬オンエア予定)
一般市民は名古屋から瑞浪までの5名、総勢14名で行動を共にした。


最初に訪ねたNo.61地点は、細い地道の林道奥に車を停め、ヤブコギで約30m登った暗いヒノキの人工林。間伐の手も入らず、枝打ちもされていない様子。まずは中心になる樹を定め、その回りに一辺5mの正方形を作る。実際には洗濯ロープを使って5m毎に結び目を作り、枯れ枝を杭にしてコーナーを固定する。この範囲内での診断項目は以下の通り。
1.人工林の植生調査
  斜面の向き・傾斜角度・落葉層と腐植層の状況・草本木本調査・樹木調査
2.人工林の混み具合調査(調査面積50平方メートル・半径4m)
  森林種類・林分状況(枯損木・竹笹の侵入)・樹高・樹数・Ha当たり本数
3.緑のダム効果測定
  土壌の水分浸透性測定・土壌採取


(左写真/No.61地点の中心木から半径4m以内の樹木の数と胸高直径を測定)
(右写真/No.61地点の樹木の高さ、枝下高さを測定)
No.61ポイントの調査はおおむね下記の通りだった。
森林の種類はヒノキ人工林
斜面の向きは北西、傾斜角度は23度
落葉層の状況は「まだら」で、被覆率は0〜50%
腐植層の状況は「ある」で、5cm以上
草本木本の調査は、被覆率20%以下、笹なし、草本はシダ、ツルリンドウの2種・落葉広葉樹2種・常緑広葉樹1種・針葉樹1種
混み具合調査は直径巻き尺を使用。胸高直径は17〜18cm、半径4m以内15本


(上写真/No.61とNo.18地点の草本木本調査)
照度管理で歴然と異なってくる人工林土壌に育つ草本木本の育成差


(上写真/No.18地点の緑のダム効果を測定)
→→※緑のダム効果とは?
61ポイントの人工林は樹齢30年ぐらいとの話だったが、リーダー、ガイドのお話を要約すると、次のような評価(私見)になるだろう。
植林は一般的に182cm間隔で植えられたが、枯損木以外に間伐の跡は見られなく、枝下高も低いので、全く手が入っていない状況。半径4m以内に15本の混み具合は、1ヘクタール当たりで計算すると、15本×200=3千本で「超過密」判定の重症と言える。適正値が800本であることを考えると、三分の一から四分の一に減らして「適性」と言え、すでに手遅れの感。枝打ちされない樹木の節は、穴が空く「死に節」を造り、材木の価値を落とす。過密な人工林は根が発達できず、風水害に弱い上、陽の当たらない土壌は、下草や木本も育たない腐植層の貧困な、保湿性・浸透性のない、土砂崩れ災害の発生しやすい地質を形成する。私見ではあるが、悪い人工林の代表例です。
→→※「死に節」「生き節」とは?

日本の森は森林施策による建築材用の人工林が多く、悲しいことに、それを守る人たちが激減しています。安価な外材の輸入が国内林業にダメージを与え、高品質の国産材が価格破壊で三分の一にまで下がりました。これでは林業経営が成り立たなく、森離れ現象が加速しています。


調査終了後、再び中部大学恵那キャンパスに戻りました。地元住民が炊き出してくれた豚汁と五平餅を頂き、実行委員会の総括で締めくくりましたが、はるばる松本から市民参加した森林ボランティアの女性の感想は、参加者に継続させるパワーを与えてくれた。
全国でも例を見ない、多くの市民参加による「森の健康診断」活動が、土岐川、庄内川、伊勢三河から全国に拡がることを期待したい。



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