北アルプス
涸沢の春山合宿(槍ヶ岳・北穂東稜・奥穂高岳・屏風の頭)
北穂高岳東稜


涸沢春山合宿
1966年5月3〜8日
3日 上高地→涸沢
4日 奥穂高岳往復・屏風の頭往復
5日 北穂高岳東陵
6日 横尾→槍沢→槍ヶ岳往復
7日 涸沢撤収→横尾→徳本峠→松本

5月のこの時期は冬季の遭難者が見つかることが多い。シートに包まれて下りてきたソリと、涸沢の登り途中ですれ違った。道を空けて合掌する。

涸沢は近いようで遠い。ましてや五日間もベースを張るとなるとキスリングも重くなる。横尾からの登りは雪に足を取られると、途端にアゴが出る。到着した涸沢にはテントの花が一杯だ。それほど、春の涸沢は魅力ある存在なのである。見渡せば屏風の頭から吊り尾根、奥穂、北穂にぐるりと囲まれた白銀の世界が広がっている。ここはまだ冬である。

春の涸沢にテントを張ると、夜明け前に聞こえてくる雪崩の音が不気味である。深い静けさの最中に、突然ザザザザッと地鳴りがする。テントまでは襲われないと分かっていても、気味の悪いものである。

4日の奥穂は、I隊員が持参したスキーを担ぎ、奥穂登頂後、コルから滑る姿を写真に収めたが、格好良くはなかった。まだまだ時間があったので、ベースから屏風の頭まで番外編のオプションピストン。

5日の北穂東陵はこの合宿で最も気分のいい雪上登山だった。上の写真はその時のもので、私のパーティーは東陵をアタックして北穂に登った。ベテランのUさんにトップを任せ、しんがりを私が歩いた。アンザイレンするほどの危険な個所もなく、晴れた雪上を北穂まで快適に攻めることができた。下山の沢筋尻セードは、雪崩を気にして一気に滑り降りた。

6日の行動はハードだった。横尾まで下ってからの槍ヶ岳アタックは、帰路を考えるとゾッとした。槍沢を登らず、そのまま北の稜線を登り詰めた。槍のテッペンはさすがに気分がいい。帰りは槍沢を尻セードで下る。

この合宿は終始好天に恵まれた。下山の徳本峠越えは、歩く人もいなかったのかトレースがなく、腐った雪に膝まで足を取られ、サンザンの行軍だった。疲れてたどり着いた麓には、白いリンゴの花が待っていた。

北ア、信越周辺へ戻る   山歩記のトップへ