山歩きガイド・三ノ沢岳
デジカメ山野草トレッキング
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左/三ノ沢岳南陵
山名 中央アルプス・三ノ沢岳
標高 2847m
所在地 長野県
登山日 2002年7月21日
天気 曇りときどき晴れ
メンバー 4名
コースタイム
07:00 千畳敷
07:50 極楽平
08:05 三ノ沢岳分岐
10:40 三ノ沢岳/11:40
13:50 三ノ沢岳分岐
15:00 千畳敷
17:40 ロープウエイ乗車
思惑通り、7時前にロープウエイ山上駅、千畳敷に降り立った。振り返れば伊那谷は雲に包まれ、その雲表の彼方に南アルプスと富士山がくっきり望まれる。今から登る中央アルプスはガスの中。
過去に5回訪れているが、宝剣の見えない千畳敷に立つのは珍しい。登山届けを出して、いざ出発。Mさんをトップに、私はしんがりを務める。初めて一緒に歩くMさんは慣れたもので、ゆったりと足を馴染ませる思いやりを感じさせるペースで登っていく。小さな黄色のスミレ、キバナノコマノツメが目に飛び込んでくると、コイワカガミ、ツガザクラ、ハクサンイチゲ、チングルマが道端を埋めている。道はだんだんと勾配を強める。カールから一気に突き上げている岩稜は、その中腹からガスに覆われ、私たちもその中を歩くようになる。ほどなく極楽平に着いた。木曽側から吹き上げる風は冷たく、岩陰で簡単に朝食をとり、主稜を北へ、宝剣岳方面へ向かう。この辺りだけに咲くコマウスユキソウが、強風にちぎれんばかりに震えている。ヒメウスユキソウとも言われ、小さいが豊富な綿毛に包まれている。
千畳敷から南アルプス、富士山を望む。
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ヒメウスユキソウ(コマウスユキソウ)極楽平にて
三ノ沢岳分岐から主稜と別れ、ハイマツの緩い下り道をたどると、伊那川源頭の三ノ沢カールが広がり、砂礫地に白や黄色の花をちりばめている。ふたたびハイマツ帯を下る。どんどん下っていく。2800mの稜線から最低鞍部まで300m近く高度を下げるが、登り返しを考えると足が重い。ガスの切れ間から稜線や青空も姿を現す。ルートは稜線にほぼ忠実に作られていて、ハイマツと花崗岩のコントラストが興味を引く。天気が良ければ最高の山歩きが楽しめる山域といえる。
毎年、梅雨明け10日の山行を恒例化している。目的は高山植物で、この時期に開花する花は多く、この辺りもチングルマ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイの群落が目に心地いい。ハイマツが赤い雌花を咲かせ、その下にはツマトリソウやゴゼンタチバナが行儀良く白い花をひろげている。登り返しの道はちょっときつい。ときどきさし込む日射しと、現れる景色に慰められ、立ち止まってシャッターを切る。こういう姿のほうが絵になりやすい。
三ノ沢岳稜線を歩く。クリック拡大表示
コイワカガミ コケモモ ツガサクラ ハハコヨモギ
妻の足が重くなる。M、I両氏に、先に頂を目指してもらうこととして、ゆっくり登る。弱音を吐いたことのない妻が「ここで待っている」という。「折角来たのだから。ゆっくり休み休みでいいから」と促す。峰を左に回り込むと、きれいなチングルマのお花畑。ここは風の影響を受けないのか、花弁が痛んでいない。
ハイマツの雌花
ここからは山頂が近い。上から声が聞こえる。「ビールで乾杯だよ」とIさんの声。三角点に着くと、歓迎しているかのように雲が散り、青空が広がった。ビールで乾杯。

流れる雲の彼方に木曽前岳の稜線が浮かび、
そのまた彼方に初夏の入道雲と絹雲をたなびかせる紺碧の空。
明るい花崗岩が折り重なる山頂の平らな場所に車座をつくり、
贅沢なテッペンのひととき。
質素な昼飯のおいしさ、他愛もない会話の楽しさ。
アッという間の一時間。やっぱり、山はいい。

中央アルプスのパノラマ写真が撮りたかったが、さすがに主稜にまつわりつく雲はしつこく、あきらめて山頂を後にした。帰路はもっぱら撮影モードに切り替え、それぞれのペースで道草。同じ道を戻るとは言え、登り返しの三ノ沢分岐までは、やっぱり辛い。
腕章を着けた、同年代の指導員風の一行とすれ違う。「シモツケソウがきれいですね」と笑顔で問いかけてきた。私もこの花は好きだ。端正で清楚、控えめに咲いているのが可憐である。往路で見かけたときは、雨に濡れて精彩なかったが、帰路で見る花びらは純白に輝いていた。
分岐の道標にたどり着くと、流れる雲の合間から宝剣岳が顔を覗かせた。この時間になると、人影もまばらで朝の混雑が嘘のようである。登る衝動にも駆られたが、先行組は極楽平方面に小さくなっているし、帰りのロープウエイの待ち時間も心配だ。ここから極楽平まで、ヒメウスユキソウを見つけながらゆっくり歩いた。
極楽平で待っていた二人と話し合い、少しでも早い整理券調達のために、またまた先行してもらうことにした。往路では姿を見せなかった宝剣岳が、千畳敷カールの新緑の向こうに、雄姿を天に向けて突き上げている。いつ見ても素晴らしいアルプスの風景である。文明の利器は誰でも簡単に2600mの高地に引き上げてくれる。夏の混雑は当然といえば当然だ。変にうなずきながら到着した千畳敷駅の周辺は人また人。
ここで2時間45分待つことになる。時間つぶしにレストランへ入り、千畳敷を周回し、余った時間をガスでコーヒーを湧かして雑談に充てた。これもまた楽しからずや。
木曽前岳の稜線が浮かんできた
山頂直下の岩場に野猿がいた。
三ノ沢岳からの帰路
宝剣岳 極楽平から
中央アルプス宝剣岳主稜線
その他の出会った花々 いずれもクリックで拡大表示します
ミヤマキンバイ キバナノコマノツメ ハクサンシャクナゲ ハクサンシャクナゲ ツマトリソウ
ツマトリソウ ツマトリソウ チングルマ チングルマ チングルマ
ハクサンイチゲ ハクサンイチゲ ハクサンイチゲ ゴゼンタチバナ シナノキンバイ
ヨツバシオガマ ハクサンチドリ ウラジロナナカマド イワツメクサ イワツメクサ

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