早朝に起きて、ロスへ旅立つ娘を名古屋空港へ送っていったが、空は曇り空、まだ7時を回ったばかりなので、鳩吹山の予定を取り止めて、帰宅後ひと眠りした。
目が覚めると外は晴れ。花粉症の妻を残して独りそそくさと車を運転する。41号を飛ばして可児川、広稜閣の駐車場に車を停めたのが丁度正午だった。直ぐに山靴を履き、歩き始める。
5分も歩くと、飛騨木曽川国定公園・カタクリ群生地の標識がある。ここから鳩吹山へ登るのだが、とりあえず今日の目的の一つであるカタクリを撮影することにする。訪れる人も多いが、カメラを構える人も多い。カタクリが山の斜面を薄紫色に染めている。今日の陽気で、ほとんどのカタクリが偉そうに花弁をフン反り返らせている。とは言え、奥ゆかしくうつむいているので、こちらは寝そべってカメラを構えなければならない。
30分ほどカタクリの撮影に時間を費やした後、鳩吹山の東に延びる尾根に取りつく。急な斜面をジグザグに登っていく。ときどき露岩の上を歩くが、山道の整備はいい。咲く花はない。一ヶ月もすればツツジが山肌をピンクに染めるだろう。一人歩きはついついペースが上がる。ましてや花がないと、休む気も起きない。可児や美濃の街並みがどんどん下に見える。
突然、あずまやに出た。ベンチが配され展望台になっている。蛇行する木曽川の彼方に木曽、美濃の山並みが浮かんでいるが、春霞で遠望はきかない。ここから一旦ゆるやかに下った後、登り返すと鳩吹山の山頂に着く。30分とかからない。珍しく汗をかいた。Tシャツ一枚になり、水を飲んでいると、シャッターを押してくれないかと頼まれた。「さあ皆さん、笑顔で楽しく、ワン、ツウ、スリー」
携帯電話が鳴る。娘の声だ。「成田にいる」。今から搭乗手続きをするという。娘は一年、ロスでホームステイ生活に入る。イラク問題もあり、つい今しがたトルコのハイジャックがニュースで飛び込んだので、「直ぐに中止して戻って来なさい」と言いたいところだが、「気をつけて。頑張るんだよ」と電話を切った。展望台まで往路を引き返し、そこからは大脇口への道を下る。尾根筋と異なり、その南の支沢へ下る緩やかな道を駆け下りる。可児川に合流する手前の沢筋に、可愛い小さな春の野花が咲いていた。
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