のんびり山歩き・御岳の継子岳(ままこだけ)
デジカメ山野草トレッキング
継子岳
ままこだけ2858.9m・御岳


登山道で見かけた花々 クリック拡大表示

イチヨウラン、バイカオウレン、モミジカラマツ


イワカガミ、カニコウモリ、ゴゼンタチバナ

ユキザサ、マイヅルソウ、
右の花が分かりません。教えていただければ幸いです。
山名 継子岳
標高 2858.9m
所在地 長野県
登山日 2003年7月12日
天気 曇りときどき晴
メンバー 4人・低徘
コースタイム
06:00 名古屋駅
09:00 チャオ御岳スキー場
09:20 ゴンドラ山頂駅
10:30 稜線分岐
12:00 雪渓撤退
前日突然の決行となった。雨に降られたら麓を散策しようと、低徘メンバーを誘って都合4人、一台の車で出かけることにした。名古屋を出て、中央高速を中津川で下り、国道19号を北へ向かう。雨は本降り。それぞれが思うことはただひとつ。「雨よ、上がれ」

木曽福島から361号に入り、地蔵峠の下をくり貫いた新地蔵峠トンネルを過ぎる頃には雨が上がった。今日はついている。朝の開田高原は雲の下に眠っているように静まり返っている。日和田高原への道を取り、9時ジャストにチャオ御岳スキー場のゴンドラ駅に着いた。閑散としている。天気予報は40%の降水確率。こんな日に山へ登るお目出度い人は私たちだけか。ネットからプリントアウトした割引券を提示して、2,000円を1,600円で往復券ゲット。キャビンに乗り込むと、4人だけのためにゴンドラは動き始め、標高2190mの山頂駅まで運んでくれる。これから登る継子岳は、頂上付近を霧のベールに包み、怪しげに誘惑している。

登山道の入口で、ゴゼンタチバナ、マイヅルソウがお出迎え。よく見ると、カニコウモリも蕾を付けている。山道は樹林帯に入り、トラバースするように日和田道の尾根筋に向かっている。さるぼぼさんの指さす先に白い花。さすがに目ざとい。薄暗い樹林の木陰に、小さなイチヨウランが佇んでいる。整理券発行、とまではいかないが、順繰りに撮影モード。雨に打たれ過ぎて可憐な哀愁ポーズではあるが、鬱かない表情に見える。
ツガやシラビソの原生林と苔むした濃緑が支配する様は神秘的である。この山域は御岳の北斜面にあるため、植生が遅れ気味である。春を告げるユキザサが白く輝き、コミヤマカタバミがまだまだ咲きかけの状況である。撮りこぼしの花は、ここに来れば1〜2ヶ月はタイムスリップできる。

日和田道分岐には、ゴゼンタチバナとマイヅルソウの群落が待っていた。ここで小休止を取り、いよいよ尾根筋の急登に挑戦である。ピンクのイワカガミとバイカオウレンが多い。灌木の背丈が低くなると、突然長大な雪渓に出た。マップを見る限りルートは尾根筋を忠実に登っているが、見当たらない。ルートは雪渓に隠れているのだろう。平均斜度は25〜30度ぐらいか。雪渓上を歩いて滑り具合を確認する。止めることはできる。ステップを刻むこともできる。アイゼンを装着しようとしたら、一人が持参していない。
しまった!! 事前に連絡してなかった。私のアイゼンを履くように指示したが、私もトンマ、古い壊れたアイゼン持参。片足アイゼンで歩くように促し、いざ出発。後続女性が滑らないようにステップを切るが、雪が堅く、息が切れる。雪渓の縁を、ときどきヤブに逃れながら高度を上げる。運動不足がたたって鼓動が激しい。息を整えて再び歩き始めたら、ひとりが滑落。スローモーションで滑っていく。止まりそうで止まらない。当人は右岸へ方向を逸らして、結局ブッシュで停止。ほぼ100mのグリセード、いや尻セードならぬボディセード。
さるぼぼさんが言う。「撤退しますか」。
「そうしましょう」。
もう一人の誘導をお願いして迎えに行く。雪渓をトラバース気味に横切りながら尻セードで到着。「大丈夫ですか?」。いつもの笑顔が帰ってきたが、挙げた両腕の内側が擦り傷で真っ赤になっている。ザラメ雪に抵抗した痕が生々しい。暑かったので、途中で上着を脱いでしまったそうだ。再び雪渓を慎重に誘導、トラバースして対岸の登山路にたどり着く。さるぼぼ組も直ぐ上まで下りてきた。「この岩の上で昼食にしましょう」。
「気をつけて」と、言おうとしたら、また滑落。今度は雪渓下部までズルズル40m。また迎えに行く。「大丈夫?」。太股を打ったらしい。腿をさすりながら「ウン、大丈夫」。二人が待つ岩まで戻り、マキロンで傷を手当してから、昼食の準備を、と思ったら。
「ドッ、ドッ、ド、ド、ドー!!」
御岳の再噴火かと思わせる地響き。上を見上げると、雪渓上部に雪煙が上がり、黒い塊が落ちてくる。私の背丈の倍もあるような岩塊が、凄まじい勢いで飛び跳ねている。「逃げろ、逃げろ!」。雪渓から離れて、岩陰にしゃがみ込む。思わずカミさんを抱いている。
「ドドドン、ドーン」。約10mの至近距離を通り過ぎて、谷間の樹林に消えた。こんな場所で悠長に昼食はできない。直ちに撤収して、下山を急いだ。身体に寄りつく無数の虫に急き立てられながら、昼食を取ることもなく、結局ゴンドラ駅まで歩き続けてしまった。今回はドッと疲れた。反省することも多い。グループの皆さんを危険な目に遭わせたことを、最も反省している。ピッケルがなかったら、あっさり引き返すことである。雪の上を歩く前に滑落訓練はやっておくべきである。

この後、麓の開田高原で初夏を満喫しながら食事をとった。→開田高原記録

開田高原記録へ続く

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