台風10号の通過で、9日登山の予定を一日順延した。昨夜は高校時代のクラス会が開催された。恩師三浦先生の計らいで、中部大学新穂高山荘本館を貸し切り、宴会とナイトコンサート。私は妻と山仲間の河原夫妻を同伴した。健ちゃん、康さん率いる合計8人のハワイアン&ジャズ混成バンドの懐かしのメロディに続き、私も久しぶりに妻とデュエットで銀座の恋の物語を唄った。その後も飲み会が続き、結局真夜中の2時に寝床へ潜り込んだ。
6時の露天風呂はまことに爽快。首までどっぷり浸かって周りを見渡す。蒲田川の流れは激しいが、対岸の山腹にまつわる雲はやさしく樹林をなでながら流れている。雲の切れ間からうっすらと日射しが入り込む。台風一過の晴天が始まる。
ロープウエイは予想に反してそれほどの混雑もない。一般観光客より早めの到着がよかったのだろう。二階建ての第二ロープウエイに乗ると、展望が開ける。後部正面に錫杖岳、笠ヶ岳、抜戸岳が居並ぶ。右へ目を移せば双六から西鎌尾根、槍ヶ岳もくっきり存在を示している。反対に目を転ずれば焼岳の荒々しい山肌がうかがえる。今日はどこまで歩けるか。メンバーはクラス会の三谷夫妻、山仲間の河原夫妻、私と妻の合計6名。混成軟弱登山隊は西穂山荘止まりか。西穂高口山頂駅に降り立ち、同行したクラス会のメンバーに別れを告げて歩き出す。なだらかな樹林帯のアップダウンを三度繰り返すと、勾配は本物になる。この時期になると、咲く花に初夏の勢いはない。イワカガミも、マイヅルソウも、特長のある葉っぱだけが認められる。カニコウモリやアキノキリンソウが目立つ。ハクサンフウロも見納めの様相である。展望の利く場所を見つけて小休止をとり、水分補給をして、再び登る。考えてみれば、すでに十数年、この山域には足を踏み入れていない。西穂山荘が焼失する前に登ったのが最後だった。その山荘が、あっけなく目に入ってきた。
一息入れた後、主稜の登りにかかる。ここからはハイマツ帯の中を歩く。振り返れば霞沢岳の麓に上高地、大正池が静まり返り、噴煙をかすかにあげる焼岳の彼方に乗鞍岳が優雅な稜線をカタチ作っている。気持ちのいい夏雲が広がり、その下には贅沢なアルプスが充満。初めての高山を経験する三谷夫妻の顔がイキイキしている。ハイマツの下で、隠れるようにリンネソウが小さなピンクでウインクする。この時期はトウヤクリンドウやアキノキリンソウが主役のようで、キンポウゲ、シナノキンバイ、イワギキョウはすでに峠を越えている。歩きづらいガレ場の急登をひと漕ぎするとお花畑に着く。ここで昼食をとる予定だったが立入禁止の標識が立ててある。自然保護とは言え、まったく残念。花に囲まれて昼食。ロマンチックなアイデアは葬られた。体調がもどっていない妻も含めて、4人はここまでの行動で終わりにさせ、稜線で昼食タイムを取ることにさせた。私と富代美さんは、ちょっと偵察。せめて独標までと足を伸ばす。
最後の岩場で渋滞している。続々と降りてくる。限りがないので、大声をあげる。「登る人もいますから、区切って道を譲って下さい」。山慣れた人たちなら、対面通行できるルートである。「高所恐怖症なのに、こんな場所に連れて来るんだから」、と女の子が父親に叫んでいる。思わず笑えてしまうが、当人は本気なのだ。山頂は混雑しているので、写真を撮って直ぐに下山。みんなが待つお花畑入口の稜線にもどって、私たちも昼食タイムの仲間入り。岐阜県のヘリコプターが何度となく旋回している。「うるさい」。
復路のロープウエイ混雑が気掛かりなので、早めの下山とする。今日は珍しく持参しなかったアルコールを補給するため、西穂山荘でジョッキの生ビールを飲み干し、一気に下山した。昨夜電話があっただめちゃんは双六あたりか。たしか水さんも単独で槍沢をつめているのだろう。何にしても、稜線に出れば爽快な涼風と絶景かな・・・
多くの花には巡り会えませんでしたが、クリックすれば拡大表示します。
トウヤクリンドウ、リンネソウ、コバノイチヤクソウ
イワツメグサ、アキノキリンソウ、カニコウモリ、クロクモソウ
ミヤマホツツジ、ホソバトリカブト、カラマツソウ、ゴゼンタチバナ |