サハリン最大のレジャー施設ホリデーでバイキングの昼食をとった。ここの料理が私には最も合っていた。ただし、ビールは別料金で100ルーブル(約400円)と高い。ここにはカジノ、クラブ、サウナなどの設備も整っている。
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愛・地球博 市民放送局
森と自然を守る人たち-No.9
自然との共生
取材相手
ネイチャーガイド
インタープリター
ワシリ・マキシム・ミハリョフ
Vasiliy M. Mikhalev
Guide-interpreter
取材協力
薬用植物資源研究センター北海道研究部
研究リーダー農学博士 柴田 敏郎氏
中部大学応用生物学部環境生物学科
助教授 農学博士 南 基泰氏
取材・記事作成 長山 伸作
別途ビデオ取材 中部大学MMC 砂川 綾乃 |
ワシリさんが選んだ取材場所は、ユジノサハリンスク市民の憩いの場所、ガガーリン公園の森。若いカップルが座り込んで話し合っている横を通って森に入ると、即座に野草に手を触れて「ハナウドは食用としてサラダにします。こちらのヨモギは薬草として利用されています」。行く手を見回して5メートルほど歩き、「このオニシモツケも、春先の6月にはサラダスープに入れるといい」。「エゾウコギは強壮剤として使われます」。彼は50メートルも歩かないうちに、十種類を越える野草の効用を紹介した。寒いサハリンの春は遅いが、待ち焦がれた春先のエゾイラクサやフキノトウは、スープの食材として市民に愛用され、あるいはプレスした汁を薬にする。
サハリンの人たちは、身の回りの自然の恵みを、うまく利用している。先住民の一部属アイヌ人は、このページトップにも紹介したエゾトリカブトの毒を塗った武器で、ヒグマを退治したそうであるが、同時に薬としても利用していた。レストランでよく出されるコケモモジュースも、ここでは身近な野草である。
日本の家庭でも、以前は軒先にアロエの鉢をよく見かけた。「医者いらず」といわれるほどの万能薬だっが、今は見つけることも少ない。親から子への植物の効用伝承が途切れることに、柴田さんも心配している。ドラッグストアの薬やサプリメントに、安易に手を出さず、自然の恵みに目を向けたいものである。都市部への人口集中と乱開発で、里山へのアクセスが不便になってきたが、身近な自然との共生を、あらためて考えたいものである。
緑に溢れるこのサハリン州にも植物に関する法律が存在する。山菜の乱獲は日本でも問題になっているが、ここでは80%の植物を残す特別保護法があり、林業監督官が目を光らせている。植物に関するレッドデータも存在している。日本における課題は、インタープリター制度の導入によって自然との共生を促し、里山や森のガイドを通じて、保護管理を訴える必要がありそうだ。
ワシリさんは、今回の中部大学植物調査隊のガイド役であり、現地旅行代理店TSURIBITOSHAと契約して、食事に至るすべての面倒を見てくれている。一昨日のトゥナイチャ湖では、一緒に歩きながら白い花を咲かせているノコギリソウを摘んでいた。ハーブティーと同じようにして飲むそうで、弱った胃腸に効くそうである。昨日のチェーホフ山では酸性雨を嘆いていた。中国の急激な工業化が海を渡って酸性雨を降らし、ガンコウラン、ハイマツ、コケモモに影響が出ているとのこと。二年前には南中部西側のエゾアカマツに枯木の被害が目立ち、問題になっている。豊かな自然に恵まれたサハリンにも、国を越えた環境問題が浮上している。これは他人事ではなく、日本にとっても酸性雨は時間の問題であろう。
ワシリさんは1959年1月1日生まれの45才。32才のペレストロイカで一大決心、日本語を独学で身に着け、インタープリターの資格を活かしてネイチャーガイドの仕事をしている。狩猟を趣味に山野を歩き、エネルギッシュに大自然の中で暮らしている。「自然との共生」を地でいく彼は、自然を熟知した良識人であり、今回の旅で、私たちが彼と巡り会えたことは実に幸運であった。
私たちのテーマである「温暖化が与える植物への影響」は、根気が勝負の長い研究になるが、北方のルーツを探りながら、また来年の一歩前進に期待しよう。
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