◆行程 7月1日 |
天気 |
晴れ |
行程 |
チェーホフ山 |
09:00 |
ホテル出発 |
09:50 |
林道出発 |
11:40 |
林道分岐登山口 |
13:10 |
展望台/14:00 |
15:30 |
サブピーク 859m |
17:25 |
登山口 |
18:00 |
林道駐車場所 |
18:35 |
ホテル着 |
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レーニン公園のトゥーショット。若い恋人のうらやましい姿を写真に撮りたくて声をかけてみた。「プリーズ」の言葉で撮らせてもらった。まだハタチぐらいか。
ガイドのガポネンコさん
レーニン像
ピロシキを売る女
ピロシキ
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昨年は到達できなかったチェーホフ山。今年こそはと意気込んで初日に予定を組み込んだ。日頃の行いがいいのだろう。今日も快晴のようである。チェーホフ山は、私たちが滞在しているユジノサハリンスク郊外にあり、20Kmほど東に位置する。専用マイクロバスはガガーリン公園の横を走り、直ぐに未舗装の林道を走るようになるが、これが悪路。下手をすると天上に頭を強打する。途中のゲートは管理人不在。友達だからと、ガイドは勝手にゲートを開いて侵入したが、結局は悪路のために途中で停車。そこから林道を歩くことにした。
昨年より一ヶ月早めたため、春の植物が多い。こちらも日本同様、遅がけの雪に見舞われ、例年より季節の到来が10日ほど遅れているという。そのためか、春と初夏の植物が混在して咲いている。本州では一般的に標高2,500mを越えないと咲いていないハクサンチドリが、ここでは林道から尾根筋まで雑草のように群生している。昨日は平地でタンポポのように咲き乱れるミヤマキンポウゲに驚いたが、この林道全域には仲間のキツネノボタンが黄色で埋め尽くしている。ここの森林は日本領土下にエゾマツやトドマツが植林された。バスで走っている頃はエゾマツが多かったが、いつの間にか白い幹のトドマツに変わっている。植物の観察と撮影のため、登山口まで40分ほどの歩程を倍以上費やしてしまった。
ガイドのガポネンコさんは58歳の巨漢だが、足取りは軽い。前回とは異なるルートを誘導する。15分ほどショートカットできるそうだ。トドマツの大木に熊の爪痕が痛々しい。「俺の領域に入るな」と言わんばかりで気味が悪い。沢筋の湿地には花期を終えたミズバショウの大きな葉が点在している。間伐の手も届かない薄暗い林床だが、わずかな日照に育つ野草は多い。シロバナエンレイソウもそのひとつだが、花が大きく目立つ存在である。オオシロバナエンレイソウかと思ったが、北海道の柴田さんの同定では違うようだ。「日本の野生植物」でオオシロバナエンレイソウを調べたら、内花被片は先がとがらず、長さ25〜40cm。花糸はごく短い、とある。沢筋に鮮やかなピンクを見つけた。僕にとっては初物である。うつむき加減に咲く花は絶世の美女。翌日の柴田さんの調査結果ではサクラソウモドキとのこと。この美しい花にはふさわしくない心外な名前に、憤りすら覚える。珍種のヒメムヨウランも初めてお目にかかる野草である。
このメンバーでは予定通りに行程は進まない。すでに正午を回っている。ガイドは焦っていることだろうが、構わずカメラ片手に道草が続く。それほど花が多い証拠でもある。午後1時を過ぎて、森林限界を出た展望台で昼食となった。はるかにオホーツク海が眺められる。行動予定に組み入れてあるトゥナイチャ湖も見える。快晴の青空に白い雲がふたつ、みっつ。いつも笑顔のガイドは、ここで火を起こしてもてなしを考えていたようだが、その時間的ゆとりはない。もう2時に近い。この日当たりにチシマフウロ、ハナシノブを見つけた。ハナシノブはエゾノハナシノブかも知れない。
腹ごしらえの後、わずかの登りで稜線を歩くようになるが、南面の植生には驚かされる。ハクサンチドリの群落に混じってテガタチドリ、ノビネチドリを見つけた。それにも増して感動したのは、ボタンキンバイソウの群落である。黄色ではなく鮮やかな橙色で目に痛いほどの存在感がある。始めはレブンキンバイソウかと思ったが、調査結果ではボタンキンバイソウとのこと。チェーホフ山のシンボル的な存在で女王の名に恥じない印象的な花である。左の写真は、林道から見上げたチェーホフ山前衛の岩峰で、調査隊の最終到達点859m。
この後も初対面の花々に時間を費やし、岩峰直下のエゾツツジ、イソツツジの見事な様を写真におさめて頂きに立ったのが午後3時半。昨年同様、チェーホフの頂はまだまだ遠い。ここで断念することとして、涼風に身をまかせ絶景の時間を岩峰上で楽しむこととした。ハクサンイチゲを岩陰に求め、イワベンケイやエゾツツジを題材に写真を撮った。サマータイムなので日はまだ高い。もっとのんびりしたい。肩のツツジ帯からガイドの声。「もう下りましょう」。誰も耳を貸さない。ただ笑って手を振るだけ。担ぎ上げた吟醸酒をクーラーから取り出してグイッ。360度の眺望は素晴らしい。次に訪れるチャンスを考えると、そうそう簡単には山頂を後にしたくない。ユジノサハリンスクの街並みが俯瞰できる。その向こうにアニワ湾がキラキラ光っている。左手には相変わらず大きなオホーツク海が横たわっている。しっかり歩いて1時間というチェーホフ山は、右手後方に位置する。その展望をさえぎるものは何もない晴天の午後である。
左/登山口で休息をとる調査隊。右/林道を下り終えた中部大学調査隊メンバー。
下りは専用車の待ち合わせ場所まで2時間で下り終えた。 同じルートのピストンだったが、さすがに疲れた。50種以上の植物を確認。200カットの撮影枚数。その都度座ったり寝転んだり匍匐前進したり。ホテルに帰って即バスに入ったが、お湯はだんだん冷たくなる。疲れを癒すどころか、寒さに震えて飛び出す始末。この時期はダニが多いので気をつけたい。ホテルに入る前にボディチェックし、埃を払い、自室に戻ったら衣服を洗濯し、入浴する。ダニは皮膚を破って体内に入るそうだ。
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